ウズラと言えば、日本では主に卵が食されています。お肉屋さんにウズラ肉が売られていることは、ほとんどありません。ウズラ肉が売られていても、ほぼ100%輸入品です。一方、ヨーロッパではウズラ肉を使った料理が数多くあります。例えば、フランス料理のカイユ・オ・レザン(Cailles aux raisins)、コンフィ・デ・カイユ(Confit de Caille)などが有名です。フランス語でウズラは「カイユ」と言うのですね。また、スペインでもウズラ料理は一般的なようで、スペインを食べ歩いた人が「修道院(アルカンタラ)のウズラ料理―スペイン料理七つの謎」という本を出版しています。ヨーロッパでは、ウズラ肉を使った食文化が発展しているようです。ヨーロッパウズラはアフリカで越冬する渡り鳥なので、ヨーロッパ全土に分布しているのかもしれません。しかし、ヨーロッパウズラは体に毒を持つ鳥と報告されています。フグのように内臓に毒が溜まるのではなく、食する部分である筋肉や脂肪に毒がある鳥です。
ヨーロッパウズラは渡りの時期だけ、毒を持ちます。
毒持つ鳥はとても珍しいです。大体7種程度しかいません。ヨーロッパウズラは、数少ない毒鳥の1種ですが、常に毒があるわけでありません。ヨーロッパウズラが毒を持つのは、渡りの時期です。アフリカに渡る秋から約4カ月の間、毒を持つようです。また、全ての個体が毒を持つわけではなく、一部の個体に限られています。毒のあるヨーロッパウズラを食した場合、横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)という中毒症状となります。骨格筋を構成する横紋筋細胞が融解して、筋細胞内の成分が血中に流出する症状を示します。重症の場合、腎機能が低下して、腎不全となります。最悪の場合、臓器機能不全を発症し、死亡する場合もあります。意外と危険な毒と言えるでしょう。
養鶉場で飼育されたヨーロッパウズラは、毒が無く安全です。
現在、ヨーロッパで食肉用に飼育されているウズラは、品種改良が繰り返され、大きく育つウズラです。また、飼料等も改良されて、より肉質の良い物となるように飼育されています。その結果、食肉として出回っているウズラ肉に毒はありません。また、渡りの時期以外も毒は無いので、ジビエ料理に出てくるウズラは、この時期に狩猟されたヨーロッパウズラでしょう。ヨーロッパウズラの毒は、毒を持つ昆虫などを食した結果かもしれません、ただ、2006年に少年がウズラ中毒となった例が報告されています。また、ギリシャのレズボス島では、ウズラ中毒患者は結構多く報告されています。秋にヨーロッパ地方を旅行する場合、ウズラのジビエ料理には注意が必要かもしれません。
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