最新ヒメウズラ研究―おしりをマッサージすると、受精率が高まる?
- Hideki Kobayashi

- 8月4日
- 読了時間: 3分
ヒメウズラは、鳥類の研究に利用されることがあります。以前、ヒメウズラは様々な学名が使用されていましたが、近年、Synoicus chinensis に統一されているようです。ヒメウズラを研究に利用される理由は、狭い場所での飼育が容易、体が小さく丈夫、産卵能力が高い、世代間隔が短い、生後4週間で性別が判別できるなどです。また、ヒメウズラは飼い慣らされた後でも、種特有の行動特性を保持している点も研究に利用される理由の一つです。実際、ヒメウズラは約30年前にモデル動物として提案されました。そして、20年以上にわたり、主に動物学、動物遺伝学、遺伝学、免疫学の研究に使用されてきました。モデル動物としての研究は、鳥類一般に関する研究ですが、中にはヒメウズラ自体に関する研究成果も発表されていたので、ご紹介します。

ヒメウズラのオスの総排泄孔をマッサージすると品質の良い精液が取れる。
良いメスと共に良い精液をオスから採取することは、鳥類の人工繁殖に必要な技術の一つです。オスから精液を採取し、顕微鏡観察などを行い、精液の品質が研究されています。今回発表された論文では、総排泄孔をマッサージすることで、良い精液を採取できるという内容でした(論文1)。
総排泄腔マッサージにより、90% の試行で精液の採取に成功し、糞便または尿酸による汚染はわずかでした。鳥の飼育密度による精液特性の有意差はありませんでした。ヒメウズラの精液は、精子の運動性(50.0 %)、生存精子率(88.0 %)、および形態異常精子率(21.0 %)でした。総排泄腔マッサージは、オオウズラの精液を採取する上で非常に効果的な方法であることを著者たちは主張していました。また、ヒメウズラの精液特性は、将来的にこの種の繁殖能力の評価と人工繁殖の応用における基礎となることだろうと結論付けていました。有精卵から孵化する技術も確立し、数を増やせるヒメウズラの人工繁殖技術は必要だろうか?と思ったのですが、次の論文では野生のヒメウズラの数が減っていることが報告されていました。
数を減らしている野生のヒメウズラ
インドの東コルカタ湿地は、野生生物の宝庫です。野生のヒメウズラも分布しています。しかし、この東コルカタ湿地では、人による開発が進められ、これまでに記録された271種の鳥のうち、過去10年間に継続的に目撃されたのは162種のみで、109種は局所的に絶滅しており、その大半は水鳥でした。特に最近再発見されたヒメウズラの個体群に与える影響を評価するため、東コルカタ湿地内および周辺で調査が行われました。その結果、人間の活動に関連する土地利用がヒメウズラの生育環境に変化を与えていることが分かりました。また、これら生育環境の変化は、近年インドで記録されたこの種の最大の繁殖個体群であるヒメウズラの個体群全体を脅かす可能性があると結論付けられました(論文2)。
個人的には、人為的な開発だけでなく、地球温暖化も関係していると思います。実際、日本でも一般的なスズメが、その数を急激に減らしていると報告されています。ヒメウズラが絶滅危惧種に指定されると、一般家庭で飼育できなくなります。ひょっとしたら、20年後にはヒメウズラの飼育は禁止されてしまうかもしれませんね。
紹介した論文
論文1
Naskar, Anindya, et al. "Recently resighted population of Blue-breasted Quail (Synoicus chinensis) in and around East Kolkata Wetland is under threat due to development activities." Records of the Zoological Survey of India (2021): 527-535.
論文2
Wong, Isabella, Robert Doneley, and Stephen Johnston. "Semen collection and baseline semen characteristics of the king quail (Synoicus chinesis)." Theriogenology Wild 5 (2024): 100117.





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