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深海のお話

 夏休みに入り、多くの小中学生が博物館や美術館、動物園などに訪問しています。ここのところ、非常に暑い日が続いているので、水族館に行っている子供たちも多いかもしれません。付き添いの親御さんも、暑い屋外より涼しい屋内の方が安心でしょう。最近、夏休みの宿題から、自由研究が無くなる学校もあるそうですが、学校以外で色々なことを学べる良い機会です。是非、様々な所に見学に行っても欲しいと思います。

 

超深海生物カイコウオオソコエビ
超深海生物カイコウオオソコエビ

「深海生物」の水族館

 

 水族館に行くと、色とりどりの様々な魚が泳いでいます。これらの魚たちは、川や湖、浅海に棲んでいます。深海に棲んでいる生物は、高水圧環境に棲息しているため、大気圧の環境に適応して展示できる種類は限られています。深海にも浅海にも棲息できる魚は、「鉛直運動」を行います。例えば、イワシの仲間には、水深1000m位から海表面まで上下に移動する種がいます。このような水圧に適応できる深海魚なら、陸上の水族館で展示可能です。また、タカアシガニなどのエビカニ類も、水圧に適応できる種類がいます。実際、深海魚の水族館「沼津港深海水族館」が静岡県沼津市にあります。ただ、深海魚で有名なソコダラなどは、高水圧で飼育する必要があるので、陸上での飼育は困難なようです。

 

「深海」とは、どのような環境でしょうか?

 

 「深海」環境と言えば、真っ先に「高水圧」というキーワードが思い浮かぶ方が多いと思います。確かに「水圧」は重要な要素ですが、実は生物にとって重要な物が「深海」にはありません。それは、「植物」です。日光が全く届かないので、光合成をする植物は生育できません。海の植物と言えば海藻類ですが、深海では海藻類は全く見かけません。海の生態系は、「植物プランクトン」>「動物プランクトン」>「小魚」>「大きな魚」や「海藻類」>「エビカニ類・貝類」>「魚」などが挙げられます。生態系の第一歩、みんなのエサになる植物プランクトンや海藻類が無い深海は、生態系が成り立ちません。そのため、浅海から降っている魚やエビカニ類、動物プランクトンの死骸等を食べて、深海の生き物たちは生活しています。しかし、浅海の生き物の死骸も限られています。だから、深海生物の数は少なく、常に飢えています。以前、NHKスペシャルで放映された「深海サメ」と「ダイオウイカ」の争いは、何か生物を見かければ襲うという深海生物の特徴を良く表していました。


 深海とは、地上の砂漠や岩場のように植物が全くない場所に、水が満たされた環境です。岩や石、砂以外にほとんど何もない寂しい環境です。前職では、無人探査機「KAIKO」でマリアナ海溝チャレンジャー海淵の世界最深部を観察できる機会がありました。世界最深部もまた、堆積物以外何も無い環境でした。まさに海の砂漠でした。

 

世界最深部に棲息するカイコウオオソコエビ

 

 そんな海の砂漠でも「カイコウオオソコエビ」が多数生息していました。深海では生物が少なくなることは、お話ししました。カイコウオオソコエビの生息数の多さは、深海環境でもエサを食べ、生息数を増やせることを示しています。「何を食べているのか?」ということは、「何を消化して栄養にできるのか?」を調べることでわかります。研究の結果カイコウオオソコエビは植物の「セルロース」を分解できる酵素「セルラーゼ」を持っていました。カイコウオオソコエビのセルラーゼは「木片」などを分解して、グルコースを生産できる特別な酵素でした。植物片や木片は、陸上の樹木や枯葉が海に落ちて、深海まで沈んできます。沈む途中で魚類もいますが、セルラーゼを持っていません。魚類には、落ち葉や木片は食べ物ではないので、スルーします。その結果、木片や落ち葉は超深海まで沈み、カイコウオオソコエビのエサとなるのです。木片を分解して得られるグルコースは、生物にとって重要な栄養素です。だから、カイコウオオソコエビは、世界最深部でも生息できるのです。

 

カイコウオオソコエビの樹脂包埋標本をレンタルしています。

 

 カイコウオオソコエビは、マリアナ海溝チャレンジャー海淵世界最深部だけでなく、伊豆小笠原海溝最深部、日本海溝最深部などにも棲息しています。水深9000mを超える超深海の世界です。ここに棲息しているカイコウオオソコエビの樹脂包埋標本をレンタルしております。水深9000mの超深海は、水温2℃と非常に低温な世界でもあります。暑い夏に、超深海の生物をじっくりと観察してみませんか?自由研究やイベントにも活用できます。是非、メール(08shizen@gmail.com)にてお問合せ下さい。なお、カイコウオオソコエビの標本は、海洋研究開発機構とは全く関係ありません。海洋研究開発機構への問い合わせは、ご遠慮ください。

 

 
 
 

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