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地球の海洋深層水と産業界の海洋深層水

1 日前
読了時間: 3分

 海洋深層水という言葉を一度でも聞いたことがある人は、決して少なくないでしょう。かつて、海洋深層水ブームが起きて、海洋深層水という名前の飲料水も多種販売されていました。現在では海洋深層水ブームも収まり、海洋深層水関連の商品を見かけることはあまり多くありません。商品化された海洋深層水の原料は、主に水深200m位の深海から採水されています。水深200mの海水は、低温で栄養塩が多く、微生物類が非常に少ないことを特徴としています。

 

富山県では、海洋深層水の開発に力を入れています。
富山県では、海洋深層水の開発に力を入れています。

海洋学でも海洋深層水という用語があります。

 

 私がJAMSTEC在籍中、海洋深層水と言えば、海洋学の海洋深層水でした。以前、富山県で海洋深層水学会という小さな学会が開催されたことがありました。学会の海洋深層水の説明では、海洋学の海洋深層水の説明が利用されていました。当時、私は世界最深部に棲息するカイコウオオソコエビを研究していました。そこで、海洋深層水がカイコウオオソコエビの生態に何らかのヒントがあるかもしれないと考えて、参加しました。残念ながら、海洋深層水学会では、水深200m前後から採水された産業界の海洋深層水についての発表がほとんどでした。


 海洋学における海洋深層水は産業界の海洋深層水とは異なります。北極や南極で冷やされた海水は、塩分が高く比重が大きくなり、深海底へと沈みます。そのまま深海底を移動して、地球の全海洋深部を流れる海流となります。これは深層循環と呼ばれる現象で、1000年単位で地球の深海を移動します。その深層循環の海水も海洋深層水と呼ばれています。深層循環の海洋深層水は、塩分濃度が高く、高水圧のため微生物もほとんどいません。また、深海を移動するため、リン酸や窒素物などの栄養塩濃度が非常に高くなります。栄養塩の濃度は、水深が深くなればなるほど、高くなります。深層循環は水深1000mより深い海域で流れているため、産業界の海洋深層水とは全く異なる性質となっています。

 

産業上の海洋深層水の利用

 

 海洋深層水ブームが終わり、一般家庭向けの商品は減りました。しかし、産業界での利用は広がっています。第一に魚介類の養殖です。例えば、「安全な牡蠣の養殖」に利用されています。牡蠣を陸上の養殖場で、海洋深層水を使って養殖するという手法です。牡蠣は海上で養殖すると、海中に漂うノロウイルスを体内に取り込みます。その結果、生牡蠣を食べた人の中から、ノロウイルスによる食中毒に感染する人が出てきます。海洋深層水は微生物やプランクトンが非常に少ないため、海洋深層水で養殖された牡蠣は安全とされています。他の貝類の養殖にも海洋深層水が利用されています。


 以前、産業上の海洋深層水を用いた製品の中で、海洋学上の海洋深層水の説明を利用して誤認させる製品もありました。しかし、魚介類養殖に海洋深層水が利用されることは、正しい発展形だと思います、地球温暖化の影響から磯焼けを起こしている海岸にも流して、沿岸漁業を回復して欲しいと願います。


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